難攻不落な彼女
着替えて下りてきた陽介と、涼介が食器を並べたり、ご飯を準備する。


咲良は、大量の唐揚げを一心不乱に揚げる。


「もう、全部揚げとくね。明日までなら食べられるから。」


どんどん出来ていく唐揚げから目を離せない陽介。


そんな陽介を見て、咲良が声をかける。


「味見する?」



パッと顔が明るくなり、何度も頷く陽介。


パッと見で一番大きいやつを選び、大きく口を開けて頬張った。


「ちょー美味い!!幸せ〜!!」


「かわいい〜!!いいなぁ〜弟、私も下が欲しかったな。」



熱々の唐揚げを頬張る陽介を見て咲良が言うと、涼介が眉間に皺を寄せた。



「全然、可愛くないよ。もうデカいしさぁ」



陽介はここ最近身長が伸び、涼介とかわらなくなっていた。


「いやいや、うちとかすごいよ。

 一番上のお兄ちゃんは185cm以上あるし、2番目のお兄ちゃんなんて、190cm近くあるんだよ?

 3番目のお兄ちゃんはちょっと小さくて180cm無いくらいだけど、お父さんだって180cmあるし、買い物行ってはぐれても、すぐにわかるもん。」



その言葉を聞いて、涼介は驚いた。糸井家の男達はみんな170cm台で、似たり寄ったりだ。



いくら咲良が170cmと背が高い方だとは言え、それだけ揃いも揃って高いとは。


同時に、母親のことが話題に上らないのが気になった。


涼介の母親は、弟の陽介を生んですぐに他界してしまった。涼介はまだ、2歳になっておらず、母親の記憶は残っていない。



母親の記憶が無いというのは、寂しい気もするが、全く無いからこそ、寂しく感じないと言う面があるのも事実だ。


(聞いてもいいものだろうか・・・)



もし、他界していて、まだその悲しみを引きずっていたら、聞いたことで嫌な思いをさせてしまうのではないだろうか・・・



そんなことを思って、何も言えないでいる涼介。

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