難攻不落な彼女
「お母さんも大きいの?」


ひたすら唐揚げを頬張っていた陽介が能天気に聞く。


「あーお母さんは・・・」

言葉を濁す咲良を見て涼介が慌ててフォローしようとすると、


「150cm・・・」


小さい声で咲良が答えた。



「ちっさ!」



とっさに出た陽介の言葉に咲良は拗ねたように言う。



「お母さん、小さくてすごく可愛いんだよね。お兄ちゃんが大きいから忘れがちなんだけど、わたし女子にしては、背高い方じゃない?

 もうちょっと小さい方が良かった。」



「えー咲良ちゃんも十分可愛いよ!」



「ホント?ありがとう。」


4つ目の唐揚げを頬張りながら言う陽介と、年下に軽い感じで言われた所為か、否定もせずに、軽く流す咲良。



なぜは腹が立つ涼介。



「お前、食べ過ぎだろ!」



腹いせに、唐揚げの盛ってある皿を取り上げると、陽介が抗議する。




「そんなにあるのになくなるわけないだろ!りょう兄のケチ!!」



「もうすぐ食事なんだから、待てよ!」



そんな兄弟喧嘩が始まろうとしていると、



「ただいまー」


玄関から声が聞こえてきた。


長男の帰宅だ。


入ってくるなり、咲良を見て驚く長男。


その顔は、どことなく涼介に似ているが、甘さは少ない。



「あ、お邪魔してます。鈴木咲良と言います。」



彼は、咲良を見た後、机に置かれている唐揚げを見つめ、手を伸ばし口に入れた後


「うまっ!」


と言いながら、もう一つ手に取り、言った。


「こんばんは、涼介の兄の浩介です。涼介の彼女ですか?」


良い笑顔で聞いてはいるが、その口の中と手には唐揚げが。


そんな兄を見て恥ずかしくなる涼介。


(うちの兄弟はどこまで唐揚げが好きなんだ!)


自分も食べたいのに、食べるタイミングを逃した涼介は、少しイライラしながら言った。


「クラスメイト!家に一人だって言うから誘ったの!!

 飯だから、さっさと着替えて来いよ!」


「ふーん」


まだ何か言いたそうではあったが、早く食事にしたいのか、おとなしく着替えに行った。
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