難攻不落な彼女
「食器洗いまで手伝ってもらっちゃってごめんね。」


時刻は、20時30分を過ぎていた。


「遅くなったし、送るよ。」


涼介が言うと、


「いいよ!大丈夫。そんなに遠くないから、一人で帰れるよ!」


遠慮する咲良に浩介が言う。



「駄目だよ。こんな時間に女の子を一人で返す訳にはいかなよ。

 お願いだから、涼介に送らせて?」


諭すように言う浩介に、咲良は迷ったような表情をする。


「そうだよ!危ないよ!りょう兄が嫌なら、俺が送るよ!!」


無邪気に言う陽介の言葉に、浩介も続ける



「あ、涼介が嫌なの?じゃあ、俺でもいいよ?」


にこやかに言う浩介に咲良が慌てる


「べ、別に涼介君が嫌なわけじゃ!!」


そんな時、玄関で物音がして、


「ただいま〜」


誰かが帰ってきた


「あ、けい兄じゃない?」


「あれ?友達と食べてくる割には早くないか?」



陽介と浩介がしゃべっていると、リビングに人が入ってきた。


「けい兄、おかえり〜」


陽介に『けい兄』と呼ばれた人物は、咲良を見て固まった。


それを見て、涼介が言う


「あ、この子はクラスメイトの・・・」


「恵介くん・・・」


その言葉に驚いた涼介が、咲良を見れば、咲良も驚いた顔で恵介を見つめていた。


「え?知り合い?」


陽介の声に、恵介は我に返る。


「いやいや、司の妹だよ!」


その台詞に、


他の3兄弟が反応する。


「司って、あの鈴木司か?」


鈴木司といえば、恵介の高校からの親友の一人だ。


どちらかと言えば軟派な雰囲気の恵介とは真逆の彼は、黒髪に眼鏡をかけており、こそらへんの女の子には負けないくらい綺麗な顔をしている。


涼介よりも少しだけ身長が高く、細身の彼は、その綺麗な姿とは裏腹に性格がきつい。


彼の外見の美しさは、その性格のキツさを際立たせ、その威圧感は半端ではない。



「あれ?じゃあ、前に涼介君が言ってた知り合いの鈴木ってお兄ちゃんの事?」


 咲良の問いに、涼介は頷く。


咲良を『鈴木さん』と呼ぶたびにチラつく顔は確かに司のものだった。
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