難攻不落な彼女
「彰君は184cmくらいだからね。巧君は190cmくらいあるよ。」


何でもないように答える。


「しかも、強いんだよね?」


「うん。ずーっと空手やってて3段だったかな。
 
 高校の時は、全国大会3連覇したらしいよ。」


「「全国大会3連覇??!!」」


涼介と蓮がハモる。


「そう。まぁ、大きいし、強いけど、一番性格が穏やかなのも巧君なんだよね。」


190cmもあり、全国大会3連覇の男が穏やかというのが想像つかない涼介と蓮。


咲良は続ける。


「そのお兄ちゃんが泣いちゃったんだよね〜

 『俺が不器用なばっかりに、咲良の夕飯がカップ麺になっちゃった。二人じゃなくて、俺が風邪を引けば良かったんだ』って。

 何か、めっちゃ気にしちゃって。

 それから、昼とかならいいんだけど、夕飯にカップ麺だと、その時のこと思い出すんだよね。大きいお兄ちゃんが泣いてる姿。結構、衝撃だったから。」



「それは確かに衝撃かも。」


由衣の言葉に咲良が笑いながら言う。


「そうでしょ?7歳も上の、強くて、優しいお兄ちゃんが泣いちゃったんだよ。もう忘れられないよ。」


「なんか、鈴木さんってお兄さんに溺愛されてるのな」


蓮が言う。


「え?何で?」


「だって、鈴木さんって、恵介さんの友達の鈴木司さんの妹なんだろ?

 司さんが妹を溺愛してるのは俺でも知ってるし、今の話しだって、相手が可愛い妹だから、泣いちゃったんだろ?どーでもいい相手なら、別にカップ麺でもいいだろ。」


「あれ?橘君、お兄ちゃんと知り合い?」


「いや、涼介の家で何度か会った事があるくらいだけど。すっげぇ印象的な人だから。」


「あ、そうなんだ。」


「おい。涼介」


蓮が小さな声で涼介に話しかける。


「何?」


「お前、何か障害多そうだな。」


咲良は少し前を由衣の話しながら歩いていて、二人の会話は聞いていない。


「あの、司さんに、全国3連覇の兄貴だぞ?」


ニヤニヤしながら言ってくる蓮に、涼介はため息をついて答えた。


「この間会った、長男も何か凄かったよ。」


「マジか?」


面白がる蓮に、涼介は言ってやった。



「まぁ、俺はまだ兄貴を気にする段階じゃないし。

 お前は、自分のことどうにかしろよ。」



多分、蓮の表情は苦くなっただろうが、それは見ないでおいてやった。
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