難攻不落な彼女
それから、涼介は、朝登校すると咲良と話し、授業を終えると4人で課題をして、咲良を家まで送って行くのが日課になった。


咲良との会話はとても楽しく、あっという間に家についてしまう。


どんどん色づく自分の思いを涼介は自覚していた。



そして、金曜日。


「終わったー!!」



由衣が背伸びをしながら大きな声で言った。


課題が出来上がったのだ。


「間に合って良かったね!」



笑顔で言う咲良だが、涼介の心中は複雑だ。


(一緒に帰るのも今日が最後か・・・)


課題が終わったのは良いが、咲良と一緒に帰る口実が無くなってしまった涼介は、あまり喜べなかった。


「よし、帰ろう!」



由衣の一言で教室を出た。



少し前を由衣と楽しそうに会話しながら歩く咲良。



そんな咲良を見つめていると、横から蓮が話しかけて来た。


「どーすんだよ。」


「どーもこーもないよ。」


ふて腐れて言う涼介に蓮が続ける。


「だって、もうすぐテスト期間に入るし、それが終わったら、夏休みだろ?

 いいのかよ。それで。」


確かに、夏休みに入れば、咲良との接点は一切無くなる。


それは物凄く嫌だが、涼介にはどうしようもない。


「・・・由衣をさぁ、花火に誘おうかと思ってるんだけど、お前、鈴木さん誘わない?」


小さい声で蓮が言った。

涼介が驚いて蓮を見ると、蓮は気まずそうに言った。


「やっぱいい。」



「誘う!」


少しだけ大きくなった涼介の声に咲良と由衣が振り向いた。


涼介が慌てて


「何でも無いよ!」


と言うと、二人はまた前を向いて歩き始めた。


「お前、声でがいよ」



蓮の非難も涼介は気にならない。


蓮と由衣の仲にどんな進展があったのかわからないが、涼介だって咲良と一緒に花火に行くチャンスだ。


ずるい考えかもしれないが、蓮と由衣が一緒なら咲良が断る可能性は低い。


咲良と帰るのも今日が最後だと思って沈んだ心があっという間に浮き上がった。


それから咲良の家に帰るまで、ずっと涼介の頭の中は、咲良を花火に誘うことでいっぱいだった。




咲良の家に着いた。


「涼介君ありがとう!」


礼を言う咲良。

「・・・」


何も言わない涼介に、咲良が心配そうに尋ねた。


「大丈夫?帰り道もちょっと様子が変だったけど、もしかして体調悪い?」


「そうじゃなくて!!」
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