難攻不落な彼女
いきなり大きな声を出した涼介に咲良が驚く。
「蓮が、吉田さんを花火に誘うって言うんだけど、咲良ちゃんも行かないかなって。」
「花火?」
「うん。8月の第二土曜にあるやつ。」
「あぁ、橘君が由衣を誘うの?」
「そう、二人っきりだと気まずいから、俺らも一緒に行かないかって。」
別に、蓮がそう言った訳ではないけど、ついつい言い訳がましく言ってしまった。
真剣な顔で見るめる涼介を咲良が見つめ返す。
「いいよ。」
笑顔でそう言った。
「マジで?!良かった!!断られたらどうしようかと思ってた!!」
断られる可能性は低いとは思っていたが、もし断られたら、かなりのショックを受けたであろう涼介は、思わずガッツポーズをした。
そんな涼介を見ながらクスクス笑う咲良。
「ガッツポーズまでしなくても・・・せっかく橘君が勇気を出したんだから、協力しないとね。」
「そうだね。」
涼介にとっては、あの二人が上手く行く事より、咲良と花火に行ける方が重要な気がしたが、それは言わない。
二人で笑っていると、
「咲良?帰って来たのか?」
咲良の家の玄関が開いた。
中から出て来た人物に、涼介は釘付けになる。
涼介が見上げなくてはならないほど長身のその人物は、服の上からでも、鍛えているのがわかる。
短髪に男らしい顔立ちのその人物は、その姿から、ものすごい威圧感を放っている。
そして、その彼は、涼介を見つけたとたん、涼介から目を放さない。
涼介は思わず固まってしまった。
「あれ?巧君。帰ってたの?」
咲良の言葉に我に返ったその人物は、咲良を見て、微笑んだ。
「あぁ、でも、着替えに帰っただけなんだ。
ちょうど、咲良が帰ってくる時間だから、顔くらい見てから行こうと思って。」
柔らかに笑うその表情に先ほど威圧感はない。
そして、そのままの笑顔で、涼介を見て言った。
「君が、糸井涼介君かな?
咲良を毎日送ってくれてるって聞いたけど。ありがとう。」
「いえ、大したことしてませんから。」
涼介の言葉に、巧は首を振った。
「いや、そんなことないよ。
実は、最近この辺で女性がナイフで刺されるという時間が連続して起こってて。
俺は刑事でその事件を担当してるんだけど、まだ犯人が逮捕できていない。
犯行時刻はもう少し遅い時間なんだけど、やっぱり一人で帰って来る咲良を心配してたんだ。課題をやってて、少し遅くなるって言うし。」
「もう、課題は終わったから大丈夫だよ。」
そう言う咲良に、巧が聞いた。
「え?じゃあ、来週から一人で帰ってくるの?」
心配そうに聞く巧を見て、涼介が言った。
「あ、俺、来週からも送って来ますよ。」
「えっ?!!」
驚く咲良を無視して、涼介が続ける。
「もうすぐテストが始まりますし、テストが始まると午前中で帰れますから。
そうなるまで、俺が送ってきます。」
「ホント?そう言ってくれると安心だ。」
「ちょっと、涼介君!」
急な展開に慌てる咲良に涼介が言った。
「ここから俺の家に帰る途中にあるスーパーがめっちゃ安いんだ。
うち、食費が馬鹿にならないからさ、これからはそこに買いに行こうかな?って思ってた事とこだから、咲良ちゃんを家まで送ってくるのだってあまりかわらないよ。」
それを聞いて、うんうん。と頷く巧。
「じゃあ、必ず犯人を捕まえるから、それまで咲良を宜しくね!」
「はい!」
まったく納得していない咲良をよそに、話はまとまった。
「じゃあ、俺、帰ります。失礼しました。咲良ちゃんじゃあね。」
笑顔で手を振る涼介に、咲良は不服そうな顔のまま言った。
「じゃあね。ありがとう。」
来週からも咲良と帰る口実が出来た。花火も行ける。
涼介の足取りは軽かった。
「蓮が、吉田さんを花火に誘うって言うんだけど、咲良ちゃんも行かないかなって。」
「花火?」
「うん。8月の第二土曜にあるやつ。」
「あぁ、橘君が由衣を誘うの?」
「そう、二人っきりだと気まずいから、俺らも一緒に行かないかって。」
別に、蓮がそう言った訳ではないけど、ついつい言い訳がましく言ってしまった。
真剣な顔で見るめる涼介を咲良が見つめ返す。
「いいよ。」
笑顔でそう言った。
「マジで?!良かった!!断られたらどうしようかと思ってた!!」
断られる可能性は低いとは思っていたが、もし断られたら、かなりのショックを受けたであろう涼介は、思わずガッツポーズをした。
そんな涼介を見ながらクスクス笑う咲良。
「ガッツポーズまでしなくても・・・せっかく橘君が勇気を出したんだから、協力しないとね。」
「そうだね。」
涼介にとっては、あの二人が上手く行く事より、咲良と花火に行ける方が重要な気がしたが、それは言わない。
二人で笑っていると、
「咲良?帰って来たのか?」
咲良の家の玄関が開いた。
中から出て来た人物に、涼介は釘付けになる。
涼介が見上げなくてはならないほど長身のその人物は、服の上からでも、鍛えているのがわかる。
短髪に男らしい顔立ちのその人物は、その姿から、ものすごい威圧感を放っている。
そして、その彼は、涼介を見つけたとたん、涼介から目を放さない。
涼介は思わず固まってしまった。
「あれ?巧君。帰ってたの?」
咲良の言葉に我に返ったその人物は、咲良を見て、微笑んだ。
「あぁ、でも、着替えに帰っただけなんだ。
ちょうど、咲良が帰ってくる時間だから、顔くらい見てから行こうと思って。」
柔らかに笑うその表情に先ほど威圧感はない。
そして、そのままの笑顔で、涼介を見て言った。
「君が、糸井涼介君かな?
咲良を毎日送ってくれてるって聞いたけど。ありがとう。」
「いえ、大したことしてませんから。」
涼介の言葉に、巧は首を振った。
「いや、そんなことないよ。
実は、最近この辺で女性がナイフで刺されるという時間が連続して起こってて。
俺は刑事でその事件を担当してるんだけど、まだ犯人が逮捕できていない。
犯行時刻はもう少し遅い時間なんだけど、やっぱり一人で帰って来る咲良を心配してたんだ。課題をやってて、少し遅くなるって言うし。」
「もう、課題は終わったから大丈夫だよ。」
そう言う咲良に、巧が聞いた。
「え?じゃあ、来週から一人で帰ってくるの?」
心配そうに聞く巧を見て、涼介が言った。
「あ、俺、来週からも送って来ますよ。」
「えっ?!!」
驚く咲良を無視して、涼介が続ける。
「もうすぐテストが始まりますし、テストが始まると午前中で帰れますから。
そうなるまで、俺が送ってきます。」
「ホント?そう言ってくれると安心だ。」
「ちょっと、涼介君!」
急な展開に慌てる咲良に涼介が言った。
「ここから俺の家に帰る途中にあるスーパーがめっちゃ安いんだ。
うち、食費が馬鹿にならないからさ、これからはそこに買いに行こうかな?って思ってた事とこだから、咲良ちゃんを家まで送ってくるのだってあまりかわらないよ。」
それを聞いて、うんうん。と頷く巧。
「じゃあ、必ず犯人を捕まえるから、それまで咲良を宜しくね!」
「はい!」
まったく納得していない咲良をよそに、話はまとまった。
「じゃあ、俺、帰ります。失礼しました。咲良ちゃんじゃあね。」
笑顔で手を振る涼介に、咲良は不服そうな顔のまま言った。
「じゃあね。ありがとう。」
来週からも咲良と帰る口実が出来た。花火も行ける。
涼介の足取りは軽かった。