難攻不落な彼女
次の日の朝、涼介が教室に入ると、咲良と目が合った。


「おはよう。咲良ちゃん。」


「・・・」


いつも通り笑顔で挨拶する涼介だが、咲良は何も言わず、涼介を見つめる。



「もしかして、怒ってる?」




涼介が、そう聞くと、咲良はため息をついて言った。



「おはよう。別に怒ってない。今日は一人で帰るから。」



まだ座ってない涼介を上目使いで見上げる咲良。


その目に、誘惑する意図はないが、涼介は少しクラクラした。




「駄目だよ。巧さんとの男同士の約束なんだから、送っていくよ。」


「でも・・・」




動揺を見せないように、平静を装う涼介に咲良が反論しかけたその時、



キーンコーンカーンコーン♪


「席に着け〜」


チャイムがなり、担任が入って来た。


まだ、何か言いたそうに涼介を見る咲良を無視した。


だって涼介は、咲良に何も言わせない為に遅刻ギリギリできたのだから。



結局、その日はまともに話すこともなく過ぎて行く。


その日の昼休み。


「お前、今日から一人寂しく帰るのか??」


蓮が尋ねて来た。


「いんや、一緒に帰るよ〜。」


「マジで?」


「うん。次男さんに頼まれて、送って行く事になった。」




「マジで?!次男にも会ったの??全国大会3連覇の男??」



「うん。確かに大きくて強そうではあったけど、一番優しくて、穏やかってのも納得な感じの人だった。」



「咲良ちゃんのお兄ちゃんコンプリートじゃん!!」



颯太の言葉に、涼介は笑う。




「コンプリートって!!」



「外から埋めるつもりか??」


蓮の言葉に涼介は苦笑する。



「そんなことしないよ・・・。

 あ、蓮。咲良ちゃん、花火行けるって!!」


「マジで??!!」



驚く蓮に、颯太が尋ねる。



「何何?何の話??」


「蓮が、吉田さんを花火に誘うから、俺が咲良ちゃんを誘って4人で行くって話。

 あ、颯太も一緒にどう?」



「う〜ん。やめとく。いつもなかなか一緒にいられないから、花火くらい2人で行きたい。」



「おー!ラブラブだね〜。」




涼介と颯太が盛り上がっていると、蓮が小さい声で言った。



「俺、まだ誘えてない・・・」


「「何??!!」」



聞くなり、涼介が誰かとメールしている。


「何やってんの?」


「だって、お前に言ったのだって、昨日じゃん!」


「そんなこと言って、いつ誘うつもりだよ!!」


「タイミングが良いときだよ!!」


「だから、それっていつだよ!」


3人で言い合っていると、扉が開いて、咲良が入って来た。



「あれ、咲良ちゃん?」


「やっほー!」


咲良は、つかつかとやって来て、蓮の前に立ち、言った。



「橘君って、以外にヘタレなんだね。」


「なっ!?」



狼狽える蓮に咲良は続ける。


「山中君が、由衣を花火に誘うんだって。」



「はぁっ??!」



驚く蓮。


「頑張れ!ヘタレ!!」


あっけに取られる蓮を置いて、咲良は帰って行った。


「咲良ちゃんって、男前だね。」


「うん。」



颯太と涼介は言った。
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