難攻不落な彼女
放課後、涼介が帰りの支度をしていると、


「りょーすけー。もう課題終わったんでしょ?今日こそ遊びに行こうよ!!」


女の子が、声をかけて来た。


「あー今日は・・・」


何て断ろうか考えていると、咲良が


「バイバイ!!」


と、逃げるように教室を出て行った。




(あっ!逃げた。)




「ご、ごめん。今日はちょっと駄目なんだ。用事があって。

 本当に、ごめんね。」



「あ、ちょっとりょーすけー」




呼び止める声を無視して、咲良を追いかけた。



玄関まで行っても、咲良はおらず、駐輪場でやっと追いついた。



「速いよ。」



急いで自転車に乗ろうとする咲良に声をかけた。



ゆっくりと振り向く咲良。



「置いて行くなんてあんまりじゃない?」



苦笑する涼介に咲良が言った。



「私の事は良いから、遊んで来なよ。最近、課題で遊んでないでしょ?」


「課題がある前から、遊んでなかったよ。それより、昼休みの事で話したかったし。」




涼介も自分の自転車に乗った。



「蓮君、傷ついてるんですけど。」



自転車を漕ぎながら涼介言った。



「男の子って、ヘタレって単語に傷つくよね。」



サラリと言う咲良に涼介は驚く。



「え?!もしかして、わざと言ったの?」



「私はさぁ、由衣が幸せになるなら、相手が誰だっていいんだよ。

 ただ、由衣が好きなのは橘君だから、橘君の味方なだけ。」



「味方を凹ませてどうすんの?」



「山中君の事だって、本当は言うのは公平じゃないじゃん。

 それを教えてあげた時点で、橘君寄りでしょ。」



「まぁ、それはそうかもしれないけど・・・」



「これで、誘えないんだったら、一生無理かもね。」



「いや、流石に、一生ってことは無いんじゃないかな?」



「じゃあ、どっちかが一回くらい別の誰かと付き合わない限り無理。」



「何ソレ?」



「相手が人のモノになって焦る系。」



「それ、やめてあげて。何かリアルだから。」



「橘君がヘタレじゃないことに賭けよう!!」


「そうだね。」



ちょうど、咲良の家に着いた時、涼介にメールが届いた。



それを見た涼介が興奮気味に言った。



「蓮、吉田さんの事、花火に誘ったって!!

 OK貰ったって!!」


「やったね!!」


「咲良ちゃんのおかげだね!」


「そんなことはないよ。結局、橘君次第だったもん。」


「ホント、蓮がヘタレじゃなくて良かった!

 じゃあ、俺、帰るわ。」


「うん。本当にありがとう。気をつけて帰ってね!」



これで、咲良と花火に行ける。そう思うと、涼介の心は浮かれた。
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