難攻不落な彼女
「「はぁ・・・」」


3人が見えなくなると、二人はため息をついた。


「なんか、ごめんね、嫌な思いさせちゃった。」


申し訳なさそうに見つめる咲良に涼介は首を振る。


「ううん、ちょっと疲れたけど、大丈夫。」


「ほんと、疲れたね。」



咲良は苦笑しながら言った。



「「・・・」」




二人の間に流れる沈黙。



「っていうかさぁ〜、涼介君、自分のファンだと思ったでしょ!!」



あえて、明るめに笑いながら言う咲良に涼介は口を尖らせながら言った。


「それを言うなら、咲良ちゃんだってそう思ってたでしょ?」


「まぁね〜」



二人は声を上げて笑い始めた。



「自意識過剰過ぎ〜!!」



涼介を指差しながら笑う咲良に、ちょっと拗ねた涼介は。



「人を指差してはいけません。」




咲良の指を握った。



驚いた顔で涼介を見つめる咲良。


それを見ながら、涼介は咲良の指を握った事を後悔していた。


(ヤバい、触るんじゃなかった。)



あり得ないくらい、心臓がバクバクしてきた。



よく考えてみると、咲良に触れたのは今が初めてだった。



顔が真っ赤になっているのを自覚した涼介が俯くと、



「よしよし、誰にでも勘違いはあるよ。」



さっきのことで恥ずかしがっていると思ったのか、そう言いながら、咲良が涼介の頭を撫でてきた。




(し、心臓が痛い・・・)




涼介の心臓は、かつてないほどの速さで脈を打っている。



咲良が頭をなでるのをやめたので、涼介が頭をあげると、



「じゃあ、帰ろうか?」




いつもの穏やかな笑顔で咲良が見つめて来た。



まだ、指を握ってしまっていたことに気づいた涼介は、慌てて手を放した。




「ご、ごめん!!」



「いいよ。指差しちゃった私が悪いだし、こっちこそゴメンね。」



「ううん、大丈夫。帰ろう。」




そう言った、涼介に咲良は頷いて歩き始めた。



その後ろ姿を眺めながら、涼介は1度大きく深呼吸してから、後を追った。




本当は、薄々気づいていた。でも誤摩化して来た。



でも、もう否定できない。誤摩化す事もできない。



それくらいはっきりと自覚してしまった。



一度触れただけなのに、咲良を好きだと言う気持ちは、一気に大きくなって無視できないものになってしまった。


< 50 / 54 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop