難攻不落な彼女
「やっぱり、鈴木さんが無理矢理送らせたんじゃん!!」


怒鳴り声が涼介の耳に届いた。


それでも涼介は、困って、少し泣きそうな顔の咲良から目がそらせない。


(駄目だ。これじゃ、駄目だ。
 
 みんなに優しくし取り繕ったって、大事なモノは守れない。)



そう思った涼介は、意を決して口を開いた。



「咲良ちゃんを、家まで送ったのは、俺が咲良ちゃんと一緒に帰りたかったからだよ。」



その言葉に、全員が涼介を見る。



「俺が、そうしたかったから、一緒に帰ったんだ。

 頼まれて、送って行ったんじゃなくて、俺が咲良ちゃんと居たかったから、一緒に帰ったんだ。」



そう言って、涼介はにっこり微笑んだ。



「それってどう言う意味??!」



「そのままの意味だよ。」



「それって、鈴木さんのこと好きって言ってるみたいに聞こえるよ!!」




その言葉に、涼介は曖昧に笑った。



本人にも言ってない事を、こんな状況で言うのは嫌だった。



ここで、咲良を好きだと言っても、咲良は信じないだろう。




♪キーンコーンカーンコーン♪




ちょうど、予鈴がなった。



「戻ろう。」


3人の間をすり抜けて、咲良の手掴んだ。


「え?ちょっと」



あっけに取られる3人を置き去りにして、涼介は咲良を連れていった。



「ごめん。」


涼介に手を引かれながら、咲良が小さく呟いた。



「咲良ちゃんに謝られることなんてないよ。」



咲良を振り返って、優しく微笑んだ。



それから、二人はどことなくぎこちなかった。



(今日は、一緒に帰れるのかな・・・)



涼介はそんなことを考えていた。



「じゃあ、また明日!」


あっという間に時間が過ぎ、担任の挨拶で帰りのHRも終わった。



「あのさ、涼介君。」


咲良が声をかけて来た。


「なに?」


「今、巧君からメールがきて、うちの近くで起きてた通り魔の犯人が捕まったって。

 だから、もう、送ってくれなくても平気だから。」


「え?」


「今まで、ゴメンね。ありがとう!」


(何で、こんなタイミングで・・・)


犯人逮捕は喜ばしいことだが、涼介は、そのタイミングの悪さを恨んだ。


でも、事件が解決したと言われれば、涼介も何も言えない。


「そっか・・・良かったね。」


「うん。ホントにありがとう。また今度、お礼するから。」


「そんなん、いいよ。俺がしたくてしたんだし。」


「じゃあ、また明日ね!」


「うん。また明日。」


咲良は手を振りながら、由衣のもとにかけて行った。
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