君と、優しくて愛しい日々を。
……こんなの、まるで恥ずかしいけど。
俺と、彼女の出会いは。
……たぶん、運命って、やつ。
「ジェーイド」
あのときはかけられなかった声を、今ではこんなにも容易くかけられる。
俺を不思議そうに見上げるジェイドに、柔らかく笑いかけた。
……知りたかった名前も、歳も、聞きたかった声も、今では全部知ってる。
ああでも、あのとき幼い彼女が読んでいた本だけは、どんなものだったかわからない。
…けれどこれからも、俺が知ることはないんだ。
俺はきっとこれからも、ジェイドに『あのとき』の話をすることはないだろうから。
「愛してるよ」
なんて言ってみると、碧の彼女の顔は赤く染まる。
そんな光景が愛しくて、優しくて、幸せで。
風に、変わらない碧色が揺れる。
……彼女はあの頃からずっと、俺の翡翠葛だ。
Fin.