君と、優しくて愛しい日々を。
…夏の間にしか聞くことができなかった、愛しい彼の声。
それが、長袖を着ている今も、こうやって聞くことができる。
……前に比べたら、今の状況は私にとって、充分贅沢なのに。
夏以外の季節でナツに会えることが、奇跡なのに。
それ、なのに。
『…あのさぁ、未海』
電話口から聞こえるナツの声に目を細めながら、「…なに?」と答える。
ナツはやっぱり不機嫌な声で、『お前、なんか勘違いしてるみたいだけど』と言った。
『…会いたいって思ってんの、お前だけじゃないから。電話だけじゃ足んないよ、俺は』
…心臓が、ぎゅう、と締め付けられて。
嬉しくて、顔が熱くなる。
……今のまんまでも、充分贅沢なのに。
これ以上嬉しいことが重なったら、私、どんどん欲張りになっちゃいそうだよ。
「…ナツも、私に会いたいって、思ってくれてるの?」
『……だから、そー言ってんじゃん』
「ふふ、そっかぁ。ありがとう」
抑えきれない嬉しさを込めて笑うと、ナツは照れ臭そうに『…笑うなよ』と言った。