君と、優しくて愛しい日々を。
「…ナツ」
「………」
「こっち見て」
「…………」
ゆっくりと、視線が交わる。
私は、目一杯に笑った。
「大好き。ナツ」
彼は赤い顔をして、唇を尖らせて。
いつものように「知ってる」と言うと、私を見つめた。
「…けどたぶん、俺のほうが好きだよ」
…なんて、嬉しい事を言うから。
冬の空気が、私達を包む。
思わずぎゅーっと抱きつくと、ナツは苦笑いしながら抱きしめてくれた。
…無理に、追いつかなくてもいいんだよね。
私達だけの大切な、あの夏の日々。
それを無理やり追い越す必要なんて、ないんだ。
片想いだったあの三年間は、私達だけの距離を生んで。
思い焦がれていたのは、私だけじゃないと知ることが出来たから。
もっと欲しがっても、いいんだよね。
君のことが欲しいって思ってるのは、もう私だけじゃない。