君と、優しくて愛しい日々を。


いきなり見つめられて、ちょっとどきりとする。


「…なに?」


首を傾げると、不意に教科書を持っていない方の手で、髪に触れられた。

そして、くるくると指に巻いてみたり、毛先で遊んでみたり。

なにも言えずされるがままになっていると、「体育のときに」と言われた。


「へ?」

「…体育のとき、結んでたじゃん。髪」

「…え。…ああ、うん」


今日の一限目が体育だったから、ポニーテールに結んでたんだよね。

一限目の前に純くんに会って、「おはよう」って言ったんだけど。

「…それが、どうしたの?」

心なしか甘い色をした彼の目に、ドキドキする。

純くんは「うん」と何故か一言だけ返事をして、少しだけ頬を染めた。



「…あれ、可愛かったから。また、見せて」



…ちょっとだけ、恥ずかしそうに。

そんなことを言うから、こっちまで照れてしまった。



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