ロングバケーション
席に着いた私は、ふと、斜め前方のスーツ姿の男に目が釘づけになった。

あの席は間違いなく、この企画の旅行者のはず。

それなのに、全く場違いなその服装に、思わず眉間にしわを寄せた。


「・・・あら、あの人結構タイプかも」

「エッ?!」

横からそんな声が聞こえ、私は思わず振り向く。


「美和ちゃんも、ストライクな人?」

「エ?!いや、全然!…ただ、旅行なのに、スーツだから、

何でかなって、見てただけ」

焦る気持ちを抑え、私はそう言った。

すると、満面の笑みを見せた。



「そう?…じゃあ、狙っちゃおうかな」

「・・・」

心なしか、目の色が変わった気がする。

…獲物を見つけや猛獣と言うべきか?

彼女はきっと、ここに、男探しに来たのかもしれない。


…私は失恋から立ち直る為の旅行なんだけど。

なんだか、私だけ場違いな気がする。


…そう確信したのは、飛行機が現地に到着した時に確信に変わった。
< 18 / 53 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop