ロングバケーション
私は頭に血が上って、おもわずこぶしを振り上げる。

・・・が。

いとも簡単に、その手は大きな手に防がれてしまった。

…意外にやるな、この男。


「女のくせに、喧嘩っ早い奴だな」

「・・・うっさい」


「気に入った」

「・・・は?」


「俺の名前は、慎一」

「…今、何とおっしゃいましたか?」

私は耳を疑った。


「し・ん・い・ち!だ!相部屋の男の名前くらい覚えてろ」

「・・・・」

悪夢だ。

ただでさえ嫌いなタイプのこの男の名前が、

よりにもよって慎一ですって?!


これはきっと、神様が私に与えた試練に違いない。

1か月で失恋脱出・・・ではなく。

どん底に落ちるの間違いかもしれない。
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