ロングバケーション
「見ての通り、最悪の男でした」

私はそう言って溜息をつく。


「どの辺りが最悪なの?」

「う~ん、しつこいところとか・・・

色んなことを聞いてきたりとか・・・?」


「…それってさ」

「・・・え?」

そこまで言って口をつぐんでしまった樹里。


なんだかその場の雰囲気が落ち着かなくて、

私は必死に話しを逸らした。


「樹里さんと相部屋の人はどうなんですか?」

「…そうね、優しくてその辺にいるような普通の人、かな」


「そうなんですか?よかったじゃないですか。

何なら、部屋、交代しましょうか?私、樹里さんの部屋の方の方が、

きっと性に合ってると思うんです」

そう言って微笑むと、曇っていた樹里の顔がパッと明るくなった。


「ホント?・・・うんうん、そうしてくれると嬉「却下」」


「「・・・?!」」

樹里の言葉にかぶせてそんな声が聞こえてきた。

その方に振り返った私たちは、硬直する。

・・・さっきとはまるで別人のようだ。
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