ロングバケーション
あまりに必死に頼むので、根負けしたのは高志だった。


「わかった…分かったから。

でもな、突然言われても、始発の飛行機が空いてるかどうかなんて、

電話してみなけりゃわからない。明日中に、日本行の飛行機探すから、

それまでいい子で待ってろ、分かったな?」


「・・・う、ん」

一気に体の力が抜け、高志の上に座り込んだ私。

(馬乗りになって叩き起こしたからなわけで)


「…どうしたんだよ、いっつもクールで、何事にも動じない美和が、

そんなに取り乱して・・・」

何とか私から抜け出した高志が、

私の頭を優しく撫でた。



「こんな旅行、来なかったらよかった」

「・・・・」


…慎一に出会わなければ、こんな事思わなかったのに。


…傍にいてほしいなんて、思わずに済んだのに。



…それから数時間後。

運よく開いていた始発の飛行機。

私はそれに乗って、日本に帰った。


…これでもう、慎一に会う事はない。

そんな事を思いながら。
< 47 / 53 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop