あの日の約束。
出会いのきっかけ。
息を切らしながら走る。
「逃げ切ったか…」
俺、不良と喚ばれている嵜宮 艾は親父がいつも付けているガードマン達から逃げてきた。
俺の家は大層な金持ちだ。
なんて云ったって親父が小さい頃から嵜宮財閥を築き上げ、今じゃ東京の大半を仕切っている超大富豪財閥になっちまった。
今日逃げてきた理由は、そんな格好で高校入学に往くなと云われたからだ。
そんな格好と云うのは俺の髪型諸々のことだ。
小学生の頃から金髪に黒のメッシュが入った髪型で、少し余った後ろ髪はゴムで縛っている。
それがどうも気に入らないらしい。
別に親父がこの髪型してる訳じゃないんだからいいと想わねぇか?
髪型と左耳の赤いピアス以外は制服だってちゃんと着てるんだぞ?
まぁYシャツは出してるけど。
これから入学する高校はかなり頭のいい高校だ。
これでも頭と運動神経はいいんでな。
学校の名前は、桜ヶ丘高校。
小学生の頃に親父に勝手もらったボロボロの腕時計を診る。
「やっべ!!」
もうこんな時間かよ!!
あと5分で入学式始まるじゃねぇか!!
急げば間に合う距離だ。
「あと3分…っ」
全速力で走り続けていると公園から大声が聴こえてきた。
『ポチ!? だめっ!!』
その声と共に飛び出してきたのは、ボールを追いかける犬だった。
その犬はトラックがすぐ目の前まできている道路に飛び出そうとしていた。
「っ……!!」
頭で考えるよりも早く体が動き、犬を庇った。
喧嘩で誰かを傷つけるのに何の躊躇いのない俺だったが小さい頃に事故で亡くした愛犬とこの犬を重ね合わせたのだろう。
『キャーー!!』
誰かの悲鳴とドンッと云う鈍い音と共に俺の意識は途切れた。
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