トナカイくんとハッピークリスマス!
「ラストオーダー入るのでもう上がっていいそうですよー」
鮫島さんにそう声を掛けられたのは7時半を回った頃。
「お疲れさん」
お店に入ってキッチンに立つお兄ちゃんの笑顔に出迎えられ、ぶぅっと頬を膨らます。
「もうこんなことさせないでよね。恥ずかしかったんだから」
「そんなこと言わずに明日も頼むよ」
「絶対お断りだし!」
コーヒーを差し出したお兄ちゃんの顔はどこか満足げで、シスコン兄の顔から優しい兄の顔になってて。
あたしが楽しく客寄せしてたこときっとバレバレだね。
「トナカイくんも一杯どうぞ」
あたしの後ろを通り過ぎようとしていたトナカイにもコーヒーを差し出したお兄ちゃん。
トナカイはそれを受け取ると、小さくお辞儀をしてそのまま更衣室へと姿を消した。
「ねぇ、お兄ちゃん。なんで“トナカイくん”なの? 中の人の名前知ってるんでしょ?」
「もちろん知ってるよ。でも名前で呼ぶよりその方があだ名っぽくていいだろ? 親近感沸くし」
「うん、まぁ…」
誰にでもフレンドリーなお兄ちゃんっぽいといえばぽいけど。