トナカイくんとハッピークリスマス!
「はい、これ」
「ん? なんだ?」
カウンター席に座り、昼に渡された手紙をお兄ちゃんに差し出す。
「ラブレター。男子高校生からお兄ちゃんに」
――カシャン。
とスプーンを落としたのはすぐ近くにいたホールスタッフの鮫島さんだった。
鮫島さんは「失礼しました」と謝り恐る恐る背中を向ける。
「またか…。俺、男にモテても嬉しくないぞ」
「別にモテてる訳じゃないけどね」
封筒から手紙を取り出したお兄ちゃんは「俺の許可が必要なんて言った覚えはないんだけどな」と呆れたように文面を目で追った。
…呆れちゃうのはあたしの方だよ。
『愛梨の変な噂が出回ってる』
と美香が教えてくれたのは去年の文化祭が終わって数日後のことだった。
『変な噂って?』
『1年の戸田愛梨に告白するには兄の許可が必要だって』
話によると文化祭に訪れてた兄がたまたま後夜祭であたしに告白をするという男子生徒と出くわし、そんな発言をしたとかしないとか。