切れない鎖

「いつ、出るのだ?」

「昼食を食べた後に」

「なら、そろそろではないか。ここにいて遅れただなんて、笑い話にもならないぞ」

これは、少女の強がりだ。

優輝も、それを分かっていた。

「じゃあ、遅れないように、そろそろ行くね」

優輝は扉の方に向かった。

「待って……」

恐らく、少女は聞こえない程度の声で、本音を言ったのだろう。

しかしそれは、優輝を立ち止まらせるには十分だった。

優輝はくるりと後ろを振り返る。

少女は驚いた顔をしていた。

まさか聞こえるだなんて思っていなかったのだろう。

「ん?」

優輝は優しく問う。

「あの、えっと、そのだな、」

少女はしどろもどろしていた。
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