切れない鎖

少女は少し驚いたような顔をしたが、ふっと笑った。

「私は、これでいいんだ」

少女も、自分用の肩にある優輝の手に触れた。

「暖かいな、君は」

もう一つの手で、優輝の頭を撫でた。

「優しいな、君は」

少女の手の方が、暖かかった。

少女の心の方が、優しかった。

「僕の方が、悲しいんだ。君は悲しんでくれるって言ったけど、僕の方が離れることを恐れてるんだ」

「一条……」

「君が僕の名前を呼ぶのって、君が悲しんでるときや、興奮してるときだよね」

図星のようで、少女は優輝の頭から手を離し、俯いた。

「今も、悲しんでくれてる?」

「あぁ。とても、悲しい」

「よかった」

優輝は笑った。

「また会おうね」

「あぁ。またいつか」

それが、精一杯の別れの言葉だった。

優輝は階段を下りていく。

下りていく。

下りていく。
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