切れない鎖

父に伝わるように、真っ直ぐ伝わるように言った。

「そうか」

父はそれだけ言った。

「もう少し時間を頂くことは可能でしょうか」

優輝が問うと父は頷いた。

「時間ならまだある。私が死ぬまでだ」

「はい……」

(父さんが死んだら家を継ぐだなんて……)

心で思っても言葉には出さなかった。

将来的にはきっと自分が家を継ぐ事になるのだから。

兄は体が弱く、人と合うのも億劫なのだ。

それに、幼い頃から一条家を継ぐのは自分だと教え込まれてきた。

しかし、ユルサルに行って少しだけ心が変わった。

今でも、いつか家を継ぐのは自分だと理解している。

ただ、ユルサルで閉じ込められている少女がいる。

そういう子達がいる世界を、もっと知りたいと思ったのだ。
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