切れない鎖

馬車は、森の奥まで進む。 

ガタン

ガタン

微かに揺れる事さえ、優輝には喜びとなった。

そして近づく。

近づく。

「ルマーズ学園に到着致しました」

行車の声を聞くと、優輝は飛び降り、お金を払った。

「ありがとうございました」

「またのご利用を」

行車は来た道を引き返していった。

「フランス語久しぶりだ~。でも上手く喋れてたよね」

優輝は弾け飛びそうな胸のドキドキを押さえ、歩き出した。

早く。 

早く。

少女の本へ!

優輝は遂に走り出した。

「はぁ、はぁ、はぁ」

やっと塔の下に辿り着いた。

優輝は走った。

今まで規則正しく歩いた階段を駆け上がった。

少女の本へ行くために。
< 148 / 284 >

この作品をシェア

pagetop