切れない鎖

優輝もちょっとだけ澄まして返した。

「一条さんは何故ここに?」

「留学先で会った友達にまた会いに来たんです」

「そうですか……」

心理戦のような、冷たいような戦いが広がる。

「少年は私が来るまでここにいるはずだったのですが、どうしたのでしょうねぇ」

「用事を思い出したんじゃないですか?」

「国王の命令だということを少年は知っていたはずなのですが、国王の命令より大切な用事とはいえ何でしょうか?」

「僕には全く分かりません」

暫く睨み合う。

次の瞬間、思わぬ事が起こった。

「もういい、やめよう」

シャカルの口調が全く変わったのだ。

「はい?」

優輝は思わず聞き返していた。

「こんな面倒な言い合いは止めようって言ってんだ」
< 170 / 284 >

この作品をシェア

pagetop