切れない鎖
優輝はユルサルの手を握った。
「さぁ、行こう」
しかしユルサルは動こうとしない。
くいくい
と引っ張ってみるが動かない。
「君、どうしたの?今更逃げたくなくなったの?」
優輝は不安になって尋ねた。
「いや……」
ユルサルは俯いたままだ。
「じゃあどうしたっていうんだよ」
ユルサルは床を目でさまよわせながら、
「もう、時間が遅い」
と言った。
そして少しの沈黙。
「あ、あぁ。そうか。時間が」
一人で不安になって恥ずかしくなった優輝は、ユルサルのように俯いた。
「じ、じゃあ、明日の朝早くに出よう」
慌てて優輝がそう言うと、ユルサルは微かに笑い、
「あぁ」
と言った。