切れない鎖
確かめるように呟くユルサルを、優輝はじっと見つめた。
(この子にとっては、全てが初めてなんだ)
ユルサルは瞳を輝かせている。
周りの人は皆、美しい少女がアジア系の男の子におんぶされているのを不思議そうに見ていた。
そして優輝は、
「あれは何だ?」
と聞かれる度に、その物について丁寧に教えた。
「本を読むだけではわからない物だな。初めて見るものばかりだ……」
そのままユルサルは黙り込んでしまった。
「……じゃあ、船に乗っちゃおうか」
優輝はわざと明るく言った。
ユルサルがこくりと頷くのが分かった。
それから何時間も何日も船に乗り、ようやく港に着くという訳だった。