切れない鎖
仲間
「セボン!」
晩ご飯の時に、シャルンが声を上げた。
シャルンは焼き魚をフォークで食べていた。
箸の使い方が分からないからだ。
初日なので、フォークを使っても良いことになったのだ。
母が笑顔のまま首を傾げる。
言葉が通じていないのだろう。
「美味しいって言ったんですよ」
優輝が言うと、なるほどと言うように母が頷いた。
「フランス語、私も覚えたいです」
咲が言うので、
「三人が日本語を覚えるから大丈夫だよ」
と言うと、咲は
「そうですか」
と笑った。
「一条」
その時、隣に座るユルサルが、優輝の服の袖をくいくいと引っ張った。
ユルサルの足に付いていた鎖は、父が手を尽くして外してくれた。
今では細い足に輪っかの痣が見えている。
それもしばらくすれば消えるだろう。
「ん?どうしたんだい?」
そんなユルサルに優輝は優しく尋ねる。