切れない鎖
もともと表情はなかったが、更に無表情になっている。
「昼飯だ」
少女は顔に似合わない言い方をするとカシャリと音を立てて歩き、ソファーに腰を下ろした。
それと同時に燕尾服を着た白髪の男性がやってきた。
「お嬢様、昼食でございます」
男性は優輝には目もくれず、ソファーの前に置いてあるテーブルに美味しそうなご馳走を置いた。
少女はそれをゆっくりとした美しい動きで食べる。
(ぼ、僕どうしよう……)
優輝はそこに立ち尽くす他なかった。
それから約十分後、少女は昼食を食べ終えた。
側にいた男性は食器を持つと、最初のようにエレベーターで降りていった。
勿論、優輝には目もくれず。
少女は立ち上がると小さな洗面に向かった。
そこで何をするのかと思えば歯を磨き始めた。
(何だか普通の生活と変わらないな)