切れない鎖
モノローグ

カッカッカッカッ

と、離れていく音。

心に開いた穴。

燕尾服の男以外の誰かと会話をしたのなんか、久しぶりだった。

黒い髪だったな。

瞳も黒かった。

肌が黄色っぽかった。

本で得た知識だと、アジア系の人間か。

ふっ。

自分で笑う。

やはり本しか頼れるものはないのか。

そうだ。

私には本しかないのだ。

それでも。

あの少年は、また来るだろうか。

少しだけ期待してしまう。

私とは、関わらない方がいい。

そう思っても、どこか、期待してしまうんだ。

カシャリ

カシャリ

カシャリ

音を立てて移動する。

そんな私に、また会いに来てくれるだろうか。

あの頑固そうな顔を、もう一度見ることが出来るだろうか____________。
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