切れない鎖
「ユルサルという所ですよ。優輝さんも知っていますね?」
「ユルサル、ですか?ヨーロッパ州にある?」
母は頷いた。
「ヨーロッパ州の中で比較的被害の少ない地域ですから、苦労はないと思いますよ」
父の代わりに全て母が答える。
優輝は小さく溜め息を付いた。
「分かりました。出立はいつですか?」
「一月後です。それまでに、準備をしておいてくださいね」
「はい。今通っている学校はどうするのですか?」
「留学は半年だ。その後の半年の為に転校扱いにはならん。分かったら荷物をまとめておけ」
父が口を挟んだと思ったらそう言葉を放った。
「はい」
だから優輝も、そう返し、部屋を出て行く他なかった。