切れない鎖
血
優輝は一週間後も、また塔を上っていた。
理由は勿論、あの少女に会うためである。
ぐるぐる ぐるぐる
カッカッカッカッ
上る、上る。
「こんなことなら、あの燕尾服の男の人にエレベーターの暗証番号を聞いておけばよかったよ」
優輝は心細さを和らげるため、大きな声を出して歩いた。
そして再び重い扉の前に立った。
(この中の女の子。本当に不思議な子だ)
優輝は扉を開いた。
そこには、やはり少女がいた。
ソファーに座り、本を読んでいる。
「また君か」
少女はこちらも見ずに言う。
話しかけられる事はないと思っていた優輝は少しだけ驚いた。
「き、君に会いに来たんだよ」
「そうか」
優輝はそれ以上何も言うことはなかった。
(どうしよう。友達になるための会話とか、なんかないかなぁ)