切れない鎖
そこには、この塔がよく崩れないものだと感心するくらい多くの本があった。
「こんなに沢山、どうやって集めたんだい?」
「一週間に一度、燕尾服の男が本を届けに来る」
「ふぅん」
優輝は本を眺めながら答えた。
「あ、枕草子もある!本当にいろんな国のがあるんだねぇ。小学生の時暗記させられたなぁ。あけぼのとか、本当に綺麗なんだよねぇ」
「あけぼのとは、そんなに綺麗なのか?」
ふいに少女が喋った。
「え?あ、うん」
優輝はしまったと思った。
(この子、外の景色も見たことないのかなぁ)
「ひょっとして君、外の景色見たことない?」
「幼い頃は見たことがあるのかもしれないな」
「そう、なんだ」
優輝は少女の後ろに立っているので、少女の美しい金髪しか見えない。