切れない鎖

それからというもの、優輝は一週間に一度、必ず塔に行くようになった。

少女もだんだんと優輝に慣れてきたようで、同じソファーに座っても、ビクッとしないようになった。

シャルンやアナにはここに来ることを言っていない。

二人が好奇心で少女に会いに来ることを優輝が恐れたからだ。

(人慣れしてないって言ってたしね)

それに、少女と二人きりの時間を楽しみにもしていた。

そしてある日も、また少女の隣に黙って座っていると、エレベーターが動く音がした。

「あ、また昼食の時間みたいだよ」

優輝が声をかけると少女は顔をあげた。

「私にだって聞こえている」

「そうですか~だ」

少女の皮肉を聞くのももう慣れた。

燕尾服の男が入ってくる。

「お嬢様、昼食でございます」

優雅な手付きで男は食事を並べる。
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