切れない鎖

その表情がすこし寂しげな事に優輝は気づいた。

「いったい、どうして半年限りだって言うんだよ……」

少女は何も答えず、食事を続けた。

カチャリ カチャリ

という音と、疑問だけが、後に残った。

優輝は重い心で昼食を食べ終えた。

「あの、美味しかったです。ありがとうございました」

燕尾服の男に声をかけると男は「いえ」と、食器を持ち上げた。

少女はまだ食べている。

「あの、良ければエレベーターの暗証番号を教えて頂けませんか?あれを使えれば階段を使わずにここまで来れるので」

毎回階段を使って上に来ている優輝は今がチャンスだと思い、男に聞いてみた。

「あれは私専用のエレベーターなので、教えることは出来ません」

男は申し訳無さそうに、ではなく、すました顔で言った。

「そ、そうですか……」
< 57 / 284 >

この作品をシェア

pagetop