切れない鎖

肩を落とす優輝に、

「疲れるのならばこんな所まで来る必要はないのだぞ」

と、昼食を食べ終えた少女が言った。

燕尾服の男は二人分の食器を持って降りていった。

(せっかく仲良くなれたと思ったのに)
 
「疲れるのは嫌だけど、君に会えないのはもっと嫌だ」

優輝が少し怒った風にそう言うと、少女は顔を背けた。

(きつく言い過ぎちゃったかなぁ)

謝ろうとして優輝が顔をのぞき込むと、

「え、あの、もしかして君、照れてる?」

少女の頬が、ほんのり赤く染まっていた。

「僕がさっき言った言葉で?照れる要素とかあった?君も照れることってあるんだねぇ」

すると少女が本の角で優輝の頭を叩いた。

「痛!?ちょっと君、何するんだよ!痛いじゃないか!」

優輝はあまりの痛さにソファーから立ち上がった。

「て、照れてなどいない!それに君、本の角で叩かれて痛くない人間などいないのだよ!」

少女も負けじと言い返す。

「そ、そりゃそうか」

優輝は負けましたというようにソファーに座り直した。

少女も腕を組み落ち着こうとする。
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