切れない鎖
少年の家は、薬を買うお金もないので、傷は舐めれば治ると、家族に言われていたのだった。
少女は涙を浮かべながら、消毒という名の手当てをしてくれた少年にお礼を言った。
気が付くと、日が暮れそうになっていた。
「また明日!」
少年は元気よく手を振る。
「うん、また明日……」
少女を手を振り返し、小さく呟く。
二人は反対方向に歩き出す。
少女は一度、重い、重い溜め息をついた。
家に着くと、父親が仁王立ちで待っていた。
「今までどこにいた」
低い、低い声で尋ねられる。
「家を抜け出して、遊んでました」
すると父親が言う。
「今日は日本語の読み書きを出来るようにするのではなかったのか?」