切れない鎖

すると、エレベーターで登ってきたのであろう男が、

「これはあなたのです」

と、鎖を拾った。

少女は一瞬、逃げ出したい気持ちにかられた。

しかしそれも一瞬で収まる。

少女は男に近付いた。

男はしゃがみ、少女の足に輪っかをはめる。

そして、開かないように鍵をかけた。

一歩歩くと、

カシャリ

と、音がする。

足が重い、少女は近くにあったソファーに座り込んだ。

「父親は、まるで鬼だな」

少女は笑う。

笑いながら、

「鬼だな……」

と、泣いた。

それからは、届けられる本を読むことしかしなかった。

キッチンがあっても、朝、昼、晩、男が食事を運んでくる。

ある日少女は男に尋ねた。

「未来が見える少年というのは、どうなったのだ?」
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