イクメンな彼氏
しばらく帰っていない田舎のことを思い出す。ずっと砂利道だったのがやっと舗装された道路、家の近くの広いグラウンドと公民館。
コンビニなんてもちろんなくて、夜には周囲が真っ暗になる実家の旅館。

5分も歩くと綺麗な水の川があって、よく水遊びに魚とりをした。
小さくて暖かい町。 懐かしい……。

だけどそれと同時に沸き上がってくる暗い感情に、私は首を振る。

「何の変鉄もない田舎ですよ。緑が多いだけの……」

曖昧な返答をどう思ったのか心配したけれど、彼は気にする様子もなかった。

悠理花ちゃんと遊び、彼と話しながら朝食を摂っていると、あっという間に出勤の時間だ。

「私、そろそろ時間なので、行ってきます」

「俺も仕事いかなくちゃ。じゃあ、またね」と、彼も悠理花ちゃんを抱っこして立ち上がった。
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