イクメンな彼氏
こうなったらなるようになれだ……。

私は彼の手を握って足を降ろす。
『30~』と表示されているエレベーターに乗り込み、到着したのは35階。

廊下には絨毯が敷き詰められていて足音が響かない。

ホテルに足を踏み入れたような心地で、彼に案内されて『3001』の扉をくぐった。

うちのマンションの倍の幅がある廊下の突き当たりには広いLDK。

カーテンを開くと街の中心地に向かって開けている窓からは、眩しいくらいの夜景が見渡せて圧巻の一言だ。

途中にドアは3つだったからトイレとお風呂と、寝室……かな。

私の家に比べると数倍の広さなものの、家族で暮らすには狭すぎる気がする。

「あの、お母さんと悠理花ちゃんは……?」

窓の前に立ち尽くしたまま先程と同じ質問を向けると、少し困ったような顔で中津さんが答えた。
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