イクメンな彼氏
「あいつとは……本当に何もない?」

予想以上に上手く出来たガトーショコラの甘い香りを嗅ぎながら、悠斗さんの入れてくれたコーヒーを飲む。

小さいながらも本格的な機械があって、冷たいミルクから簡単にカフェラテが出来上がった。

昨日のラテアートを思い出して、まさか私のために準備したのかな、なんて自惚れてしまう。

だって、いつだって彼はブラックコーヒーしか飲まないんだから。

そんな事を考えていたものだから、彼の質問の意味がよく分からなくて首を傾げる。

「あいつって、誰?」

しばらくの沈黙の後、苦笑いして「本当に分からないのか」と彼が呟いた。

「昨日保育園で会った、比奈の同僚」と続ける。

あぁ、藤本さんか。
何もないってどういう意味なんだろう。
昨日はなっちゃんが熱を出していることを教えに来てくれただけで、悠斗さんが誤解するようなことは何もないと思うけど。

眉を寄せて考え込んでいると、悠斗さんがまた口を開いた。

「俺の顔見て、すごく驚いた顔してた。
比奈のこと心配してるみたいだったから」

そうだったっけ？
あぁ、そうだ。
< 115 / 232 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop