イクメンな彼氏
夜のバイトをしていた、大学時代のことを。
彼女の家の経済状況では大学の費用を出すことは厳しくて、無理して入学金を払ってもらった彼女は学費は自分で払うと言い切った。
勉強も忙しい中、普通のバイトではとても払えない学費と生活費を払えたのは、高額なバイト代のおかげだ。
だけど彼女は時には身体に触れられたり身体の関係を強要されることもあり、辛い思いを沢山してきた。
賢一さんと出会ってからもやめることは出来なくて、嘘をついてバイトに行っていることにいつも罪悪感を感じていた。
結婚する前には打ち明けたいと言っていたけれど、やっと言うことが出来たんだ。「賢一は真面目な人だから、絶対に嫌だったと思う。
それなのに頑張ったねって誉めてくれたの。私、やっぱり賢一を選んでよかった」
微笑む彼女は本当に美しい。
大学時代の努力のおかげで国家資格も手に入れて、結婚出産しても続けられる仕事を得ている。
そして理解ある婚約者。
「本当によかったね。
おめでとう、葉月」
涙目になって祝福すると、彼女は穏やかに言った。
「比奈、悠斗さんなら大丈夫だよ」
うん、葉月。
私もそう思うんだ。
彼になら、いつか全てを打ち明けられる気がする。
「ありがとう。葉月」