イクメンな彼氏
「ユウトって誰？」

聞き覚えのある暗くて落ち着いた声音は、私の一番聞きたくなかったもので、身体が強ばるのが自分でわかる。
無意識に歯がカチカチと音を立て始めた。

手を振り払って逃げようと思ったけれど、それよりも早く保育園の門に押し付けられた。ガシャンと門が大きな音を立てたけれど、相手は気にする様子もなく続ける。

「せっかく優しくしてやろうと思ったのに、逃げようとするなんてお仕置きが必要だね」冷たい声と同時に、腹部に強い衝撃が走る。

殴られたと理解した時には、２回目の激痛が身体を襲い、私はずるずると座り込んでいた。

「はぁ……や、めて……」
何とか言葉を絞り出すと、無言で「来いよ」と強く腕を引かれ立たされる。

怖い。
怖い、怖いよ、悠斗さん……。

恐怖で脳内が埋め尽くされていくなかで、逃げなきゃ、という思いが頭に浮かぶ。悠斗さんの顔が浮かんで消える。

「嫌っ」右手に持っていたバックを振り回して抵抗した私は、三度めの衝撃を受けて地面に手をついた。
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