イクメンな彼氏
無言のままで時は過ぎ、タクシーは空港の駐車場に滑り込んでいく。保育園から見えた月は雲一つない空に輝いていたけれど、今は雲に隠れて見えなくなっていた。

私の財布から料金を支払い、洋介は私の腕を掴んだまま歩き出した。腕を掴まれていなくったって、もう抵抗する気持ちなんてない。

やっぱり私は洋介の人形なんだから。
悠斗さんとのことは全部夢だったんだ。

諦めのような納得の気持ちを抱えて彼に着いて行く。ATMの前で立ち止まり、「下ろせるだけ下ろしといて」と財布が投げられた。

どこに行くの?
疑問が頭を掠めるけれど、洋介に質問なんてしてはいけない。

私は人形なのだから、彼の命じるままに動いていればいい。そうしてさえいれば、痛いことも苦しいこともされずに済む。
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