イクメンな彼氏
私の前には海老のトマトソースパスタが置かれた。

意外と本格的なカフェなのが裏目に出て、大ぶりな海老が存在感を主張しているけれど、きっと彼が味見と言って食べることだろう。

それに今は、海老だって食べられる。……私の選択肢は、食べるしかない。

「比奈こんなに食べられないもんな、半分食べてあげる」

ほら、私の前から海老はなくなった。

「ありがとう」
私はにっこり笑ってフォークを手にする。

「向こうに行ったらどんな部屋に住もうか。比奈の家は旅館だから、広いお風呂じゃないとっていつも言ってたよな。

まぁ、二人ならワンルームでもいいか。
セパレートを探してあげるよ」

向こうって何処なんだろう、という疑問が一瞬浮かぶけれど、そんなことはどうでもいいことだ。

「ありがとう」また私は笑う。

彼の前ではこれだけ言っていればいいんだから。
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