イクメンな彼氏

眩しい光に開いた目を細めると、広い天井が見える。

ここどこだっけ……?

寝ぼけた頭でぼんやりと考える。

そっか、悠斗さんの部屋だ。

ここで暮らすようになって2週間が過ぎた。ということは、あの事件からも2週間が過ぎたということ。

それでもやっぱり慣れないのは、狭いあの部屋で暮らした7年間がいかに長かったかを物語っている。

洋介の目に怯えて、ひっそりと暮らしていた7年間。


プルルルルーープルルルルーー

枕元のスマホに手を伸ばすと、ディスプレイには『悠斗さん』の表示。
時計は9時を指している。

「おはよう」
受話器に向かって挨拶すると、「今起きたの?」と、柔らかい声が耳に届いた。

「今じゃないよ、さっき」
電話で起きたわけじゃないと言い訳する私に、悠斗さんは笑いながら「お願いがあるんだ」と切り出した。

会議で使う書類を忘れちゃったという彼に10時までに持って来れるか聞かれて考える。

「ギリギリになっちゃうかも……大丈夫?」

「いいよ。ありがとう。
会社で比奈の顔が見られるなんて、今日は忘れ物してラッキーだね」

悠斗さんの軽口に、誰もいない部屋でまた頬を染めることになってしまった。
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