イクメンな彼氏
「里谷の彼女に近づいたのは、あいつと別れて欲しかったから。北海道での仕事、あいつは彼女と離れたくないから受けられないって答えたんだ。

だから彼女の方から逃げ出してくれれば上手くいくと思った。

彼女も暴力を振るうあいつから離れたいと言っていたし、ちゃんと匿ってあげるつもりだったんだ。でも……」

でも……あんなことになった。

彼女が悠斗さんに本気になって、洋介に別れを切り出したのかもしれない。悠斗さんと会っていることに気付いた洋介が逆上して、彼女を刺したのかもしれない。

「彼女は俺のせいであんな目に合った」

悠斗さんが彼女に近づかなければ、あんな事にはならなかったのかもしれない。

彼女のことを可哀想だと思う気持ちはあるものの、私の胸のうちは別の不安で埋め尽くされていた。

「だから責任を取って、彼女を選ぶの……?」

声が震える。

「悠斗さんが私に興味を持ったのは、私が洋介の影に怯えてて守ってあげなくちゃいけないと思ったからだって分かってる。

子どもの頃お母さんを守れなかった事、悠斗さんは今も引きずってるから、私のこと守ろうと思ってくれたんでしょ?

それに悠斗さんは優しいから、今誰よりも傷付いてる彼女のこと、放っておけないんだよね……」
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