イクメンな彼氏
悠斗さんが頷くのを見たくなくて、私は目を伏せた。
誰よりも優しい悠斗さんが大好き。
だから彼女を選んだって当然なんだ。

マンションに戻って距離を置こうとしても追いかけて来なかった。
別れるつもりだったから。

分かってるのに、それなのに、どうしても私は悠斗さんを失いたくないよ。

頬が濡れるのに気付かれたくなくて、顔を背けて立ち上がろうとした私の手首が彼に引っ張られて座り込む、顎の下に手が置かれた。

「やっ」
首を振ろうとしたけど目の前に迫ってきた彼の瞳と上を向けられる顎に挟まれて思わず身体が強ばる。

「比奈は、いつも俺を買いかぶり過ぎてる。俺は優しくなんかない。
ずるいんだ……」

そのまま重ねられる唇に放心していると、角度が変わってそのまま息も出来ないようなキスになった。

何も考えられなくなっちゃう。
ダメ、ちゃんと話してないんだから……。

私は力の入らない腕で何とか彼を押し退け、息も整わないままに問う。

「待っ……て。どういう……意味なの?」
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