イクメンな彼氏
エピローグ
「急がないと、遅れちゃう」
マンションの鍵をかけ、手袋に包まれた手でベビーカーを押してエレベーターに向かう。

約束は7時。
きっと彼は時間通りに仕事を終わらせるだろう。
もしかしたら少し早いかもしれない。

シエロビルの北棟に足を踏み入れると、見慣れたスーツの後ろ姿が目に入り、私は声をかけた。
「悠斗さん」

振り返った彼は駆け寄って来て私の頬を撫で、「比奈、今日も可愛いね」と甘い言葉をかけてくる。

今朝も同じことを言ったのに。

3回目のクリスマスなのに、私に対してクリスマスケーキよりも甘い悠斗さんは変わらない。

ベビーカーの帆を上げて蕩けるような目で中を覗き込む彼。
変わったのは、ベビーカーの中で眠る天使。
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